あったまる話
先日、ある友人とコーヒーを飲みながら世間話をしていたら、彼は急に話題を変えて、「そういえば前にこんな事があった…」と話し出した。
どんな話を始めるのかと黙って聞いてたら、こうだった。
「今、向かいの爺さんが雪消しをしているのを見て思い出した…」
ある冬の夜、いたずら好きの飲み仲間が数人で飲んでたら、その中の一人が「俺の家の近くに一人暮らしの爺さんがいて、毎日家の玄関先を雪かきしてるんだが、ドカドカ降る雪の量に追い付かず、今では玄関の前が雪で囲まれてる…、年寄り一人じゃ大変だな…」と、そしたら、「夜中にこっそり玄関の雪かきして、キレイにしたらその爺さんどんな顔すべな」などと冗談話をし、ケラケラ笑い合っていたと言う、そのうち酒の勢いも借りて、元来いたずら好きの仲間としては、だんだん冗談話が本気になり、日にちを決め、スコップ、スノーダンプを持ち、夜中にその爺さんの家の前に集まって実際にやってみることに話が決まった。
そして、何日かして集まった。一人が一本指を立てて口にあて『皆んなシーシーだぞ』と言って静かに作業を始めたそうだ。そしたら、隣りの爺さんが夜中に家から出て来て「おめだ!何してんだ!」と疑いの声で話しかけて来たと言う。そいで「じつは一人暮らしの爺さんの家の玄関をこっそり雪かきして、爺さんが朝出て来た時どんな顔してびっくりするか、その顔見たくて、やってんだ」と答えたと言う。そしたら隣りの爺さん笑い出して「そりゃ おもしぇ事してるなや」と言って自分の家に入って行ったと言う。
その後、すっかり玄関先はキレイに除雪され、明るくなる頃それぞれ車に入って、爺さんの出て来るのをニヤニヤしながら待ったと言う、爺さんスコップ持って出て来た。玄関先を見て爺さん固まってしまった、車の中では大笑い!爺さん頭かしげて周りを見ていたので皆んな車から降りて、爺さんに訳を話したら、笑顔になって「いやー、ビックリした、でも有難い!………で、なんぼだ?」と聞いて来たので「爺さんのビックリする顔見たくてやったんだから、金などいらない、一度だけのイタズラだから、気にすんな」と言ったと言う、隣りの爺さんも出て来て、皆んなで笑い転げたと言う。
友人は「さもね~事考えで…、本気でやって遊んでる…50代よ。ひまだべ~」と言ってコーヒーを飲む。
あ~っ いい話聞いたなと思い、こっちまで釣られてコーヒーひと口、あったまる。
最後に友人「そんな事、ひと冬に1回か2回やってる」ときた。
本当に ひまだな~。